小説-15-「近大マグロ仕掛人の逆転ブランディング」
2026年08月27日
コラム
【あの成功には、法則があった】
「わからないことは魚に訊け」から始まるACTブランディング
―前回から続くー
「先生、ほんまに来てくれたんですね。」
美咲が、工場の入口で笑顔を見せた。
「そら来るやろ(笑)。」
「今日は、うちの会社のブランドづくりですよね。」
「そうやね。」
「でも、何から始めるんですか?」
「まずは工場を見せて。」
「それだけ?」
「うん、それだけ。」
美咲は少し拍子抜けしたような顔をした。
「何か資料を用意した方がいいですか?」
「いらん。」
「会社案内は?」
「いらんよ。」
「売上データは?」
「それも後でええわ。」
「じゃあ、何をするんですか?」
私は美咲の怪訝そうにしている顔を見て笑った。
「とにかく、現場を見るんや。」
【まずは現場へ】
私たちは工場の中へ入った。
金属を切断する音。
機械が動く音。
社員が黙々と働くなかで、時々交わされる短い会話。
長年使われてきた機械もあれば、比較的新しい設備もあるようだ。
「ここが、うちの工場です。」
美咲が少し不安そうな表情で説明してくれる。
「創業して五十年になります。」
「社員さんは?」
「三十人ほどです。」
「この会社の一番の強みは?」
「……。」
美咲の口が止まった。
「どうした?」
「それが、分からないんです。」
「なんで?」
「品質には自信があります。」
「うん。」
「納期も守ります。」
「うん。」
「社員も真面目です。」
「うん。」
「でも、それって、どこの会社も言いますよね。」
私は笑った。
「そうやね。」
「だから『うちだけの強み』が分からないんです。」
「ふーん、なるほど。」
私は工場を見回した。
「じゃあ、今日はそれを探そうか。」
「どうやって?」
「質問しながら。」
「誰に?私に?」
「いや、まずは現場の人に訊こう。」
「社員に?」
「そうや。」
最初に、長年この会社で働いているベテラン社員に話を聞いた。
「ちょっとすみません、この会社の強みって、何やと思います?」
するとその社員は、作業の手を止めて少し考えてから答えた。
「うーん……。」
「何でもやることですかね。」
「何でも?」
「はい。普通なら断るような細かい仕事でも、相談されたら何とかできないか考えます。」
横で聞いていた美咲が驚いた。
「そうやったんですか?」
「社長、知らなかったんですか?」
「いや、知ってたけど…。」
私は思わず笑ってしまった。
「美咲さん。」
「はい。」
「今の聞いた?」
「はい。」
「それ、強みやで。」
「でも、そんなの当たり前だと思ってました。」
「そこや。」
【「当たり前」の中に強みがある】
私は美咲に尋ねた。
「この会社では、難しい注文を断ることは多いん?」
「いえ……。」
「むしろ?」
「何とかできないか、みんなで考えます。」
「それを何年くらいやってる?」
「父の代からですから……五十年近く。」
「ほら。」
私は笑った。
「それ、立派な会社の個性や。」
「個性……。」
「でも、会社の中にいる人には当たり前すぎて見えへん。」
美咲は工場を見回した。
「確かに……。」
「ブランドづくりで大事なんはね。」
私は少し間を置いた。
―続くー
「わからないことは魚に訊け」から始まるACTブランディング
―前回から続くー
「先生、ほんまに来てくれたんですね。」
美咲が、工場の入口で笑顔を見せた。
「そら来るやろ(笑)。」
「今日は、うちの会社のブランドづくりですよね。」
「そうやね。」
「でも、何から始めるんですか?」
「まずは工場を見せて。」
「それだけ?」
「うん、それだけ。」
美咲は少し拍子抜けしたような顔をした。
「何か資料を用意した方がいいですか?」
「いらん。」
「会社案内は?」
「いらんよ。」
「売上データは?」
「それも後でええわ。」
「じゃあ、何をするんですか?」
私は美咲の怪訝そうにしている顔を見て笑った。
「とにかく、現場を見るんや。」
【まずは現場へ】
私たちは工場の中へ入った。
金属を切断する音。
機械が動く音。
社員が黙々と働くなかで、時々交わされる短い会話。
長年使われてきた機械もあれば、比較的新しい設備もあるようだ。
「ここが、うちの工場です。」
美咲が少し不安そうな表情で説明してくれる。
「創業して五十年になります。」
「社員さんは?」
「三十人ほどです。」
「この会社の一番の強みは?」
「……。」
美咲の口が止まった。
「どうした?」
「それが、分からないんです。」
「なんで?」
「品質には自信があります。」
「うん。」
「納期も守ります。」
「うん。」
「社員も真面目です。」
「うん。」
「でも、それって、どこの会社も言いますよね。」
私は笑った。
「そうやね。」
「だから『うちだけの強み』が分からないんです。」
「ふーん、なるほど。」
私は工場を見回した。
「じゃあ、今日はそれを探そうか。」
「どうやって?」
「質問しながら。」
「誰に?私に?」
「いや、まずは現場の人に訊こう。」
「社員に?」
「そうや。」
最初に、長年この会社で働いているベテラン社員に話を聞いた。
「ちょっとすみません、この会社の強みって、何やと思います?」
するとその社員は、作業の手を止めて少し考えてから答えた。
「うーん……。」
「何でもやることですかね。」
「何でも?」
「はい。普通なら断るような細かい仕事でも、相談されたら何とかできないか考えます。」
横で聞いていた美咲が驚いた。
「そうやったんですか?」
「社長、知らなかったんですか?」
「いや、知ってたけど…。」
私は思わず笑ってしまった。
「美咲さん。」
「はい。」
「今の聞いた?」
「はい。」
「それ、強みやで。」
「でも、そんなの当たり前だと思ってました。」
「そこや。」
【「当たり前」の中に強みがある】
私は美咲に尋ねた。
「この会社では、難しい注文を断ることは多いん?」
「いえ……。」
「むしろ?」
「何とかできないか、みんなで考えます。」
「それを何年くらいやってる?」
「父の代からですから……五十年近く。」
「ほら。」
私は笑った。
「それ、立派な会社の個性や。」
「個性……。」
「でも、会社の中にいる人には当たり前すぎて見えへん。」
美咲は工場を見回した。
「確かに……。」
「ブランドづくりで大事なんはね。」
私は少し間を置いた。
―続くー




