小説-16-「近大マグロ仕掛人の逆転ブランディング」
2026年08月28日
コラム
―前回から続く―
「まずは、自分たちにとっての『当たり前』を疑うことや。」
「当たり前を?」
「そう。」
「他の会社から見たら、当たり前やないかもしれへん。」
「なるほど。」
「逆に、自分たちが『こんなん普通や』と思っていることが、お客様にとってはものすごい価値かもしれん。」
美咲はノートを取り出した。
「書いていいですか?」
「もちろん。」
美咲は、新しいことを発見したかのように、
「当たり前を疑う」
と書いた。
【わからないことは魚に訊け】
「先生。」
「なに?」
「これって、近大マグロの話と同じですね。」
「おっ。鋭いとこに気ぃ付いたね。」
「研究者のみなさんも、最初から答えを知っていたわけではなかったんですものね・・・。」
「そう。」
「マグロが何を食べるかも分からない。」
「うん。」
「どうすれば生き残るかも分からない。」
「うん。」
「だから、魚を観察して、試して、また考える。」
「その通り。」
私はホワイトボードに大きく書いた。
「わからないことは、魚に訊け。」
「これが近大水産研究所の原点や。」
「魚に訊く……?」
「うん、当然やけど魚はしゃべれないよね。」
「そら、そうですわ。」
「だから、魚たちは何か不満があっても、自らの死をもって訴えるしかない。」
「研究者はその死を1尾たりとも無駄にする事の無いよう、常に現場に行く。」
「そして、しっかりと観察する。」
「変化を見る。」
「試してみる。」
「ダメだったら、なぜダメだったのかを考える。」
「そして、また試す。」
私は矢印をぐるっと円になるように描いた。
「これの繰り返しや。」
美咲が言った。
「それって、会社のブランドづくりにも使えますよね。」
「そう!」
「お客様のことを知る・・・。」
「現場を見る・・・。」
「やってみる・・・。」
「反応を見る・・・。」
「そして改善する・・・。」
「さらにまた、お客様に聞くんですよね・・・。」
「そうや。」
私は笑った。
「そう考えると、ブランドづくりも魚の研究も、実は同じなんや。」
―続く―




