小説-18-「近大マグロ仕掛人の逆転ブランディング」
2026年08月30日
コラム
―前回から続くー
【100点の計画より一歩目】
美咲は少し考えてから言った。
「先生。」
「何や?」
「私、今まで逆だったかもしれません。」
「ん…、それはどういうこと?」
「新しいことをやるとき、失敗しないように、最初に全部計画しようとしていました。」
「そうやろ、ようある話や。」
「でも、考えているうちに時間だけが過ぎる。」
「うん、あるあるの話やね。」
「そして結局、何もやらない。」
私は黙って微笑んだ。
美咲は矢継ぎ早に苛立ったようにこう続けた。
「これじゃあ、何も変わらないですよね。」
「そういうことやね。」
私は人差し指を立てて、強調した。
「ブランドづくりに100点の答えなんかないんよ。」
「まず一歩動いてみろ。」
「お客様の反応を見ろ。」
「違ったら変えてみよ。」
「何度も何度も訊いてみよ。」
「シンプルやけど、この繰り返しなんよ。」
美咲は、少し安心したような顔をした。
【うちの会社は何から始める?】
「先生。」
「何や?」
「ACTが何となく分かってきたんですけど…。」
「そりゃよかった。」
「でも、具体的にうちの会社では何から始めればいいですか?」
「簡単や。」
「何ですか?」
「お客様に訊いてみよう。」
「何を?」
「『うちの会社の、どこを評価してくれていますか?』って。」
美咲は驚いた。
「そんなこと訊いたことありません。」
「だから訊くんよ。」
「怖いですね。」
「何で?」
「『別にない』って言われたら……。」
「そのときは、その答えも大事な情報やで。」
「なるほど。」
「自分たちが思っている強みと、お客様が感じている強みが同じとは限らんやろ。」
「確かに。」
「そこにズレがあったら、それを『何でやろう?』と追求する。」
「それもThinking?」
「そう。」
「そして、見つけた価値を伝えてみる。」
「Actionですね。」
「反応を見る。」
「またThinking。」
「そして新しいChallenge。」
「……。」
美咲は笑った。
「本当にACTですね。」
「そやろ。」
私は工場の奥を指差した。
「次は、あの機械を見せてもらえる?」
「え?」
「何年使ってるん?」
「たぶん、三十年以上です。」
「三十年?」
「はい。」
「それ、なんでまだ使ってるん?」
「父が大事に使ってきたからです。」
「ほら。」
「え?」
「それもブランドの種かもしれん。」
「機械が?」
「機械そのものやない。」
「その機械を三十年以上大切に使い続けている会社の姿勢や。」
美咲は、工場の中の機械を見まわした。
「……今まで、そんなふうに考えたことありませんでした。」
「それでええんよ。」
「え?」
「今日から考えたらええんやから。」
私は笑った。
「ブランドづくりは、特別な何かを外から持ってくることやない。」
「自分たちの足元を、もう一回見直すことから始まる。」
美咲は、ゆっくりとうなずいた。
「先生。」
「うん?」
「私、工場をもう一度見てみます。」
「それが第一歩やね。」
「社員にも聞いてみます。」
「それも大事やね。」
「お客様にも聞きます。」
「うん、それも必要や。」
「そして、何か見つかったら……。」
「やってみます。」
「反応を見て……。」
「『なんで?』と考えます。」
「そして、またやってみます。」
私は笑った。
「そう、それがACTや。」
【美咲の今日の気付き】
今日、先生からACTブランディングについて教えてもらいました。
A=Action(行動)
C=Challenge(挑戦)
T=Thinking(考える)
最初は「当たり前のことだな」と思いました。
でも、先生の話を聞いているうちに、その「当たり前」を実際にやることの難しさに気づきました。
私は今まで、
「もっと考えてから動こう。」
「失敗しないように準備しよう。」
と思っていました。
でも、それではいつまでたっても始まりません。
先生が言った、
「100点の答えを探してから動くんやない。動きながら答えを見つけるんや。」
という言葉が印象に残りました。
そして、もう一つ。
「ブランドづくりは、特別な何かを外から持ってくることではない。」
この言葉も心に残りました。
五十年間続いてきた私の会社。
工場にも、社員にも、これまでのお客様との関係にも、私がまだ気づいていない価値があるのかもしれません。
だったら、まず探してみよう。
社員に聞いてみよう。
お客様に聞いてみよう。
そして、見つけたら一度やってみよう。
失敗したら、また考えればいい。
そう考えると、ブランドづくりが少し身近になった気がします。
ブランドは、遠くにあるものではない。
自分たちの足元に眠っている。
その価値を見つけることから、私たちのブランドづくりが始まるのだと思います。
―続くー

【100点の計画より一歩目】
美咲は少し考えてから言った。
「先生。」
「何や?」
「私、今まで逆だったかもしれません。」
「ん…、それはどういうこと?」
「新しいことをやるとき、失敗しないように、最初に全部計画しようとしていました。」
「そうやろ、ようある話や。」
「でも、考えているうちに時間だけが過ぎる。」
「うん、あるあるの話やね。」
「そして結局、何もやらない。」
私は黙って微笑んだ。
美咲は矢継ぎ早に苛立ったようにこう続けた。
「これじゃあ、何も変わらないですよね。」
「そういうことやね。」
私は人差し指を立てて、強調した。
「ブランドづくりに100点の答えなんかないんよ。」
「まず一歩動いてみろ。」
「お客様の反応を見ろ。」
「違ったら変えてみよ。」
「何度も何度も訊いてみよ。」
「シンプルやけど、この繰り返しなんよ。」
美咲は、少し安心したような顔をした。
【うちの会社は何から始める?】
「先生。」
「何や?」
「ACTが何となく分かってきたんですけど…。」
「そりゃよかった。」
「でも、具体的にうちの会社では何から始めればいいですか?」
「簡単や。」
「何ですか?」
「お客様に訊いてみよう。」
「何を?」
「『うちの会社の、どこを評価してくれていますか?』って。」
美咲は驚いた。
「そんなこと訊いたことありません。」
「だから訊くんよ。」
「怖いですね。」
「何で?」
「『別にない』って言われたら……。」
「そのときは、その答えも大事な情報やで。」
「なるほど。」
「自分たちが思っている強みと、お客様が感じている強みが同じとは限らんやろ。」
「確かに。」
「そこにズレがあったら、それを『何でやろう?』と追求する。」
「それもThinking?」
「そう。」
「そして、見つけた価値を伝えてみる。」
「Actionですね。」
「反応を見る。」
「またThinking。」
「そして新しいChallenge。」
「……。」
美咲は笑った。
「本当にACTですね。」
「そやろ。」
私は工場の奥を指差した。
「次は、あの機械を見せてもらえる?」
「え?」
「何年使ってるん?」
「たぶん、三十年以上です。」
「三十年?」
「はい。」
「それ、なんでまだ使ってるん?」
「父が大事に使ってきたからです。」
「ほら。」
「え?」
「それもブランドの種かもしれん。」
「機械が?」
「機械そのものやない。」
「その機械を三十年以上大切に使い続けている会社の姿勢や。」
美咲は、工場の中の機械を見まわした。
「……今まで、そんなふうに考えたことありませんでした。」
「それでええんよ。」
「え?」
「今日から考えたらええんやから。」
私は笑った。
「ブランドづくりは、特別な何かを外から持ってくることやない。」
「自分たちの足元を、もう一回見直すことから始まる。」
美咲は、ゆっくりとうなずいた。
「先生。」
「うん?」
「私、工場をもう一度見てみます。」
「それが第一歩やね。」
「社員にも聞いてみます。」
「それも大事やね。」
「お客様にも聞きます。」
「うん、それも必要や。」
「そして、何か見つかったら……。」
「やってみます。」
「反応を見て……。」
「『なんで?』と考えます。」
「そして、またやってみます。」
私は笑った。
「そう、それがACTや。」
【美咲の今日の気付き】
今日、先生からACTブランディングについて教えてもらいました。
A=Action(行動)
C=Challenge(挑戦)
T=Thinking(考える)
最初は「当たり前のことだな」と思いました。
でも、先生の話を聞いているうちに、その「当たり前」を実際にやることの難しさに気づきました。
私は今まで、
「もっと考えてから動こう。」
「失敗しないように準備しよう。」
と思っていました。
でも、それではいつまでたっても始まりません。
先生が言った、
「100点の答えを探してから動くんやない。動きながら答えを見つけるんや。」
という言葉が印象に残りました。
そして、もう一つ。
「ブランドづくりは、特別な何かを外から持ってくることではない。」
この言葉も心に残りました。
五十年間続いてきた私の会社。
工場にも、社員にも、これまでのお客様との関係にも、私がまだ気づいていない価値があるのかもしれません。
だったら、まず探してみよう。
社員に聞いてみよう。
お客様に聞いてみよう。
そして、見つけたら一度やってみよう。
失敗したら、また考えればいい。
そう考えると、ブランドづくりが少し身近になった気がします。
ブランドは、遠くにあるものではない。
自分たちの足元に眠っている。
その価値を見つけることから、私たちのブランドづくりが始まるのだと思います。
―続くー





