小説-19-「近大マグロ仕掛人の逆転ブランディング」
さて、今日からはいよいよみなさんの会社の売上アップと組織力強化のための具体的な戦略・各論についてお話していきますよ。
第四章
うちの会社にも、ブランドはつくれる!
―ACTブランディング実践編 ―
「先生。」
翌週、美咲から電話がかかってきた。
「どうしたん?」
「先日、先生に言われた通り社員に聞いてみたんです。」
「何を?」
「『うちの会社の強みって何だと思う?』って。」
「おお。」
「そしたら、みんな結構いろんなことを言うんです。」
「例えば?」
「『納期を守る』『難しい仕事でも断らない』『小ロットでも対応する』『相談したら一緒に考えてくれる』などいろいろ……。」
「ええやない。」
「でも、私にはそれが全部、当たり前に思えてしまって。」
私は笑った。
「前に言うたやろ。」
「ここが大事やで…『当たり前の中に強みがある』。」
「そうでした。」
「で、お客様には聞いた?」
「まだです。」
「ほんなら、次はそこやね。」
「はい。」
「ブランドづくりの第一歩は、まず現状を見ること。」
「現状を見る…ですね。」
「今日は、そこから始めよう。」
【STEP1 現状を見る】
私はホワイトボードに書いた。
STEP1 現状分析
「最初から『うちのブランドはこれです!』と決めたらあかん。」
「どうしてですか?」
「思い込みになるからや。」
「思い込み?」
「会社の中にいると、自分たちのことを客観的に見るのが難しい。」
「確かに。」
「だから、まず現状を知る。」
「何を見ればいいんですか?」
「商品。」
「はい。」
「お客様。」
「はい。」
「競合。」
「はい。」
「社員。」
「なるほど。」
「そして、自分たちが今どう見られているのか。」
私はホワイトボードに五つ書いた 。
商品
お客様
競合
社員
自分たちの評価
「この五つを見る。」
「これだけですか?」
「最初はこれで十分や。」
「でも、どうやって?」
「現場へ行く。」
「お客様に聞く。」
「社員に聞く。」
「競合を見る。」
「数字も見る。」
「そして、思い込みを捨てる。」
美咲はメモを取った。
「つまり、いきなり答えを出さない。」
「まず、事実を集めるんですよね。」
「そう、それがSTEP1や。」
【社長が知らない会社の強み】
数日後、美咲から再び連絡があった。
「先生、大変です。」
「何や?」
「社員から、私が知らなかった話がいっぱい出てきました。」
「ほら。」
「ある社員は、『お客様から電話があったら、営業担当じゃなくてもみんな相談に乗る』って。」
「ええやん。」
「別の社員は、『図面がなくても、昔の製品を見ながら再現できることがある』って。」
「それも強い。」
「さらに、『納期が厳しいときは、他の社員が自分の仕事を後回しにしてでも助ける』って。」
「ほら。」
私は笑った。
「美咲さん。」
「はい。」
「会社の中に、ブランドの種がいっぱいあるやない。」
「でも……。」
「何や?」
「私、社長なのに知らなかったんです。」
「そんなん、全然珍しいことやない。」
「えっ?そうなんですか?」
「社長は会社全体を見るから、現場の細かいことが見えにくい。」
「なるほど。」
「だから、社員に訊く。」
「お客様にも訊く。」
「自分だけで考えんことや。」
―続く―




