小説-37-「近大マグロ仕掛人の逆転ブランディング」

―前回から続くー
第五章 ~総括編~
【近大マグロを振り返る】
「先生。」
「何?」
「先生は、近大マグロに関わった頃から、もう何十年も経っていますよね。」
「そうやね。もう、20数年かな・・・。」
「今、振り返ってみて、一番大切だったと思うことは何ですか?」
私は少し考えた。
「いっぱい学ばせてもらったので、一つだけ選ぶのは難しいな。」
「それでも。」
「う~ん、それじゃあ。」
私は答えた。
「絶対できると思い続けたこと。そのために、分からないことを分かったつもりにしなかったことかな。」
「……。」
「魚がなぜ死ぬのか分からない。」
「だから観察する。」
「なぜ売れないのか分からない。」
「だからお客様に聞く。」
「なぜ選ばれるのか分からない。」
「だから、また聞く。」
「ずっと、それだけやったかな。」
「それと、あえて付け加えるなら、『いつか絶対叶える』と、いつもワクワクしてたことかなあ。」
【「わからない」は、恥ずかしいことではない】
「普通、大学の人って『分からない』って言いにくいですよね。」
「うん?そうかな。」
「なんか、自分の弱みを見せることになると思うんじゃないんですか?」
「う~ん、そう思う人もおるかなあ。」
「でも?」
「分からないことを認めることは、弱さやないで。」
「そうなんですか?」
「うん、次の行動を起こすためのスタートや。」
「なるほど。」
「『分からない』から、訊く。」
「『訊く』から、分かる。」
「分かったら、動ける。」
「動いたら、また新しい問題が出てくる。」
「そして、また考える。」
「これがACTブランディングの基本やな。」
【最後に、あなたへ】
「先生。」
「はい。」
「この本を読んでいる人にも、伝えたいですね。」
「ほう、何を?」
「ブランドづくりって、難しくないんだって。」
「そうなんや。誰でもできる。」
「大企業じゃなくてもいいんですよね。」
「うん。」
「大きな広告費がなくてもいい。」
「そう。」
「専門家じゃなくてもできるんですね。」
「そういうこと。」
「まずは、自分たちの会社を見つめる。」
「うん。」
「お客様に聞く。」
「うん。」
「社員に聞く。」
「うん。」
「現場を見る。」
「うん。」
「そして、一歩動く。」
「それだけでブランドづくりは十分始められるんですよね。」
「そういうことや。」
【ブランドは、あなたのすぐそばにある】
会社には、歴史がある。
商品がある。
技術がある。
人がいる。
お客様がいる。
そして、これまで積み重ねてきた時間がある。
学校にも、
先生がいる。
生徒がいる。
卒業生がいる。
教育の歴史がある。
地域にも、
人がいる。
文化がある。
自然がある。
暮らしがある。
歴史がある。
その中には、まだ気づいていない価値がきっとある。
だから、いきなり新しいものをつくろうとしなくていい。
まずは、足元を見る。
そして、問いかける。
「私たちは、なぜ選ばれているんだろう?」
答えが分からなければ、
「お客様は、なぜ私たちを選んでくれているんですか?」
と聞いてみる。
きっと、そこから何かが始まる。
【逆転ブランディングの最後の一歩】
「美咲さん。」
「はい。」
「最後に一つだけ。」
「何でしょう?」
「ブランドづくりで、一番大切なことは何だと思う?」
美咲は少し考えた。
そして、ゆっくり答えた。
「自分たちの中にある価値を信じること……でしょうか。」
「おお、いいねえ。他には?」
「お客様の声を聞くこと?」
「うん、それも大事やね。他には?」
「え~、じゃあ何なんですか?」
私は笑った。
「一歩、動くことや。」
「一歩?」
「そう。」
「完璧なブランド戦略をつくってから動くんやない。」
「動きながら考える。」
「考えながら、また動く。」
「その繰り返し。」
「それがACT。」
美咲はうなずいた。
「そうか、分かりました。」
「何が?」
「明日、もう一人のお客様に聞いてみます。」
「おお、いいねー。」
「そして、社員にも聞きます。」
「ええなー。」
「また分からないことが出てきたら……。」
「何回も何回も訊けばいい。」
「誰に?」
私は笑った。
「わからないことは、お客に訊け。」
【第五章の気付き】
時代は変わった。
人口は減っていく。
商品やサービスは増え続ける。
情報はあふれている。
そして、お客様も、社員も、学生も、住民も、これまで以上に「選ぶ側」になっている。
だからこそ、これからの時代に必要なのは、
「良いものをつくること」だけではない。
「なぜ、あなたを選ぶのか」
その理由を、自分たち自身が知ること。
そして、それを相手に伝え、約束し、信頼を積み重ねていくこと。
それがブランドになる。
近大マグロも、最初からブランドだったわけではない。
世界初の完全養殖に成功しても、最初は「普通の養殖マグロ」としか評価されなかった。
そこから、現場を見て、お客様に聞き、考え、挑戦し、伝え方を変えた。
その結果、「近大マグロ」という名前に新しい意味が積み重なっていった。
振り返ってみれば、それは「逆転」の連続だった。
技術を売る
→ 技術の意味を伝える。
養殖を隠す
→ 養殖だからこその価値を伝える。
自分たちの強みを語る
→ お客様に選ばれる理由を聞く。
弱みを探る
→ 見方を変えて価値を探す。
そして何より、
「ブランドをつくろう」と考える前に、
目の前の「なぜ?」に、いつもワクワクしながら向き合う。
それが、私が近大マグロから学んだことだった。
【あなたの会社にも、選ばれる理由がある】
このコラムをここまで読んでくださったあなたへ。
もし今、
「売上が伸びない」
「価格競争から抜け出せない」
「人が採用できない」
「自分たちの強みが分からない」
「うちにはブランドなんてない」
そう思っているなら、一つだけ試してほしいことがあります。
今日、誰か一人に聞いてみてください。
「なぜ、私たちを選んでくれているんですか?」
その答えが、あなたの会社の未来を変えるきっかけになるかもしれません。
もし答えが分からなかったら、もう一度聞いてみればいい。
もし思っていた答えと違ったら、そこから考えればいい。
うまくいかなかったら、またやり直せばいい。
ブランドづくりに、最初から完璧な答えなんてありません。
必要なのは、
Action――動く。
Challenge――挑戦する。
Think――考える。
そして、また動く。
その小さな一歩の先に、
「選ばれる理由」
が見えてくる。
ブランドは、遠くにあるものではありません。
あなたの会社の中に。
あなたの学校の中に。
あなたの地域の中に。
そして、これまで積み重ねてきたあなた自身の仕事の中に。
まだ誰にも気づかれていない価値が、きっと眠っています。
あとは、それを見つけるだけです。
―続くー
★あなたの会社・学校・地域にも、「選ばれる理由」があります。
売上、人材、少子化、地域活性化……。
悩みの答えは、外から持ってくるのではなく、意外と「現場」の中に眠っています。
近大マグロのブランドづくりで培った経験をもとに、企業・学校・地域の「選ばれる理由」を一緒に探します。
講演・研修・ブランディング相談・企画立案からプロデュースまで。
「うちにも何かあるかもしれない」
そう感じたら、ぜひご相談ください。
お問合先 : https://oak-j.com/contact
携帯電話 : 090-6986-1503 (大久保)




