小説-38-「近大マグロ仕掛人の逆転ブランディング」

―前回から続く(最終回)ー
【おわりに】
「先生。」
「いよいよ今日で契約の最終日となってしまいましたが、おかげさまで、うちの会社ももっと成長させていける。そんな自信が湧いてきました。」
最終日の打ち合わせを終えた美咲が、席を立った。
そして、私のほうに歩み寄りながら、手を差し出してこう続けた。
「最初にここへ来たとき、会社を何とかしなきゃと思っていました。」
「うん。」
「でも今は、少し違います。」
「どう違う?」
「会社を変える前に、まず自分が会社を見直してみようと思っています。」
「そうやね。」
「そして、お客様に聞いてみます。」
「うん。」
「社員にも聞いてみます。」
「うん。」
「分からないことがあったら……。」
「とにかく訊く。」
「はい。」
美咲は笑った。
「先生の口癖、もう覚えました。」
「何や?」
「『わからないことは、お客に訊け!』ですよね。」
私は笑いながら答えた。
「それが一番、安上がりで、一番確かなブランディングやからね。」
美咲は深々と頭を下げると、部屋を出ていった。
静かになった部屋で、私はふと、近大マグロのことを思い出していた。
【32年間の挑戦】
32年間。
研究者たちは、何度も失敗した。
何度も考えた。
何度もやり直した。
そして、ついに世界初の完全養殖にたどり着いた。
水産研究所の誰もが、
「これで一気に収益も飛躍的に伸ばせる。」
そう心を躍らせた。
しかし、本当の意味で「近大マグロ」というブランドが生まれたのは、その後だった。
技術だけでは、伝わらない。
良いものをつくるだけでは、選ばれない。
だから、人に訊いた。
現場を見た。
考えた。
挑戦した。
そして、また訊いた。
振り返ってみれば、私が長い年月をかけて学んだことは、ものすごくシンプルだった。
分からなければ、訊けばいい。
迷ったら、動けばいい。
うまくいかなければ、考えればいい。
そして――
自分たちが「もう無理だ」と思っているものの中にこそ、
「選ばれる理由」が眠っている。
これが、私の考える「逆転ブランディング」だ。
さあ、次はあなたの番です。
あなたの会社には、
どんな「選ばれる理由」が眠っているのでしょうか。
ぜひ、一度、考えてみてください。
これまでお読みいただき、ありがとうございました。
今回で、小説
『近大マグロ仕掛人の逆転ブランディング
~クライアント/金属加工会社二代目社長・佐藤美咲シリーズ~』
は、ひとまず終了となります。
38回にわたってお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この物語は、ここで一度区切りとなりますが、ブランディングの物語は、まだ終わりません。
近々、新しいテーマ、新しい登場人物、そして新しい展開で、ブランディングシリーズを再開する予定です。
次は、どんな会社が、どんな「選ばれる理由」に気づいていくのか。
私自身も、今から楽しみにしています。
この小説は、弊社のブログで紹介していますので引き続きご覧いただければ幸いです。
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それでは、また次の物語でお会いしましょう。
― ㈱オークジェイソリューションズ
代表取締役 大久保良雄 ―




