-5- 近大マグロ仕掛人のブランド再生塾/私立大学編
2026年10月06日
コラム

―前回から続くー
第三章
【強みは外から見えてくる】
「選ばれる理由」は、案外、自分たちが一番気づいていないところにある。
私は、そう考えている。
前回まで、私たちは学生たちに話を聞いてきた。
「なぜ、この大学を選んだの?」
その答えは、実にさまざまだった。
先生に相談しやすい。
困ったときに助けてもらえる。
先輩との距離が近い。
大学に来れば誰かがいる。
放っておかれない。
そして、何度も出てきた言葉が、
「安心できる」
だった。
私は、この言葉が気になっていた。
近大マグロブランディングのきっかけとなったのも、たった一人のお客さんの言葉「じゃあ、安心よね」という言葉だったからだ。
しかし、まだ結論を出すつもりはなかった。
学生がそう感じているからといって、それだけで大学のブランドが決まるわけではない。
そこで私は、理事長に言った。
「次は、保護者に聞いてみましょう」
「保護者・・・ですか?」
「はい」
「何を聞くんです?」
「学生と同じです」
私はホワイトボードに書いた。
「なぜ、この大学を選んだのですか?」
理事長が少し笑った。
「また、それ?」
私も笑って返した。
「はい。また、それです」
「先生、本当にそれが好きですね。
「シンプルな質問ほど、本音が出るんですよ」
【保護者は何を見ているか】
数日後。
大学で保護者への聞き取りを行った。
参加してくれたのは、現在の学生の保護者と、最近卒業した学生の保護者だった。
最初の方に聞いた。
「お子さんが、この大学を選ぶと聞いたとき、どう思われましたか?」
「正直に言っていいですか?」
「もちろんです」
「最初は、少し心配だったんですよ」
理事長がこちらを見る。
私は何も言わず、続きを待った。
「大学って、入ってしまったら、親は何もできないじゃないですか」
「そうですね」
「高校までは先生から連絡が来ることもありますが、大学生になったら本人任せでいいと思っていましたから」
「なるほど」
「だけど、ちゃんとやっていけるのかなって」
別の保護者も頷いた。
「私もそうでした」
私は聞いた。
「では、実際に入学してみてどうでしたか?」
すると、その保護者はこう答えた。
「思っていたより、大学の先生は子どものことを見てくれているんだな、と感じました」
「具体的には?」
「子どもが授業のことで悩んでいたときに、先生に相談していたんです」
「はい」
「そのことを帰ってきてから、うれしそうに話していたんです」
「何と言ってたんですか?」
保護者は少し笑った。
「『先生がちゃんと話を聞いてくれた』って」
私はメモを取った。
また出てきた。
「話を聞いてくれる」
【保護者が本当に買っているもの】
別の保護者にも聞いた。
「大学を選ぶとき、何を重視されました?」
「就職ですかね」
これは予想していた答えだった。
「やはり就職ですか」
「はい。親としては、そこが一番心配ですから」
「では、この大学の就職支援についてはどうですか?」
「もちろん、しっかりやっていただいてるのは知っていますよ」
そこまでは、大学の広報資料にも書かれている。
就職実績。
資格取得。
キャリア支援。
企業との連携。
しかし、その保護者は続けた。
「でも、数字だけでは決めませんでした」
「なぜですか?」
「子どもが困ったときに、誰かが相談に乗ってくれるかどうかを見ました」
私は聞いた。
「どうして、そこが大事なんですか?」
保護者は少し考えてから答えた。
「うちの子は、自分から何でも相談できるタイプじゃないんです」
「なるほど」
「だから、放っておかれる大学だったらと、少し心配でした」
またキーワードが出た。
放っておかれない。
学生からも出た言葉だった。
私は、そこに一本の線がつながったような気がした。
~続く~
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