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-8- 近大マグロ仕掛人のブランド再生塾/私立大学編

2026年10月09日 コラム


ー前回から続くー
【一枚の紙にまとめる】
私は、これまで集めた言葉を一枚の紙にまとめた。
学生。
保護者。
卒業生。
教職員。

それぞれの言葉を並べてみる。
学生:
「先生に相談しやすい」
「困ったときに助けてもらえる」
「放っておかれない」
「安心できる」

保護者:
「子どもを任せられる」
「困ったときに相談できる」
「大学に入ってからも見てもらえる」
「安心できる」

卒業生:
「卒業してからも相談できる」
「人とのつながりがある」
「一人で抱え込まなくなった」

教職員:
「学生の顔が見える」
「変化に気づく」
「学生に声をかける」
「昔から続いている」

私は、これを理事長に見せた。
理事長は、しばらく何も言わなかった。

やがて、
「……みんな同じことを言ってるんだな」
と呟いた。

「そうですね」
「それぞれ立場は違うのに」
「そこが大事なんです」

私は、紙の中央に丸をつけた。
そして、そこに一つの言葉を書いた。
「人を放っておかない」

理事長は、その言葉を見つめた。
「先生……」
「はい」
「これが、うちの大学の強みなんですか?」

私はすぐには答えなかった。
「まだ、強みだと断定するのは早いかもしれませんね」
「そうですか」
「でも、かなり有力な候補だとは思いますけどね」


【ブランドはきれいな言葉とは限らない】
私は、理事長に一つ伝えた。
「ブランディングでは、どうしてもきれいな言葉を探したくなるんです」

「例えば?」
「『未来を創る大学』や、『夢を実現する大学』・・・とか」
「確かに。そういえばそうですね」
「もちろんこれらは悪い言葉ではありません。でも、どこの大学でも使っていそうでしょ」

理事長は苦笑した。
「う~ん、そういえば、うちのパンフレットにも似たような言葉がありますねえ」
「でしょう?」
「では、どうすればいいんですかね?このままじゃあ、あかんのですか」

「ブランディングの基本は差別化。その大学にしか言えない言葉を探さないと、『特色がない』になってしまって、記憶にすら残してもらえないんですよ」
「それで『人を放っておかない』に変える?」
「その可能性はあります」
「でも、少し地味じゃないですか?」

私は笑った。
「確かに。でも、ブランドは派手ならいいわけではありません」
「……」
「むしろ、実際の行動と一致していることのほうが大事です」

例えば、
「『学生一人ひとりを大切にします』と言いながら、学生が困っていても誰も気づかなかったとすると・・・」
「これではブランドにはなりません。言動に不一致があると、信用できないからです」
「一方で、『困っている学生を放っておかない』ということを、本当に日々やっているなら・・・」

私は一気に話し続けた。
「これなら、言葉に重みが出てきて、地味でも強くなるんです」
「なぜなら、言葉と行動が一致していると、共感と信用が得られやすくなるんですよ」

【ACTブランディング】
「理事長、ここまで来たら、ACTブランディングの考え方を一度整理してみましょう」
「ACTブランディング?」
「はい」

私はホワイトボードに三つの言葉を書いた。
A Action/行動する
C Challenge/挑戦する
T Think/考える

理事長が頷く。
「まず、今回やったことがActionです」
「学生や保護者に聞いたこと?」
「そうです。実際に現場へ行って、本人たちに聞くことです」
「うん、なるほどね」

「次にThink。聞いた言葉をそのままにせず、共通点を考える」
私は中央に「人を放っておかない」と書いた。
「そしてChallenge。これを大学の未来につなげていく」
「それはつまり、今ある強みを見つけて、それを未来に向けて磨いていくこと・・・ですかね」
「ええ、そういうことです」

私は笑った。
「ブランドづくりは、広告代理店にキャッチコピーを作ってもらえばOKというものではありません」

理事長が頷いてくれたのを見て、私は言葉を続けた。
「現場を見る、聞く、考える、そして行動する」
「これにより、リアルに裏打ちされた信用と信頼が生まれてくるんです」

理事長が確かめるように質問した。
「それがACTブランディングなんですか?」
「ええ、そうです」

【ブランドは、人とのつながりの中にある】
理事長は、しばらくホワイトボードを見つめていた。
やがて、何かに気づいたように、こちらを向いた。
「先生」
「はい」
「もし、『人を放っておかない大学』を目指すとしたら……」

理事長は、少し考えながら言葉を続けた。
「今まで以上に、学生の声を聞かなければいけませんよね」
「ええ。その通りです」
「そして、先生と学生の距離も、もっと近くする必要がある」
「そうですね」

理事長は、さらに考えを巡らせるように続けた。
「卒業生との関係も、大切にしないといけないんですよね」
「ええ」
「保護者にも、大学の考えをきちんと伝える必要がある」

私は頷いた。
「理事長、それだけじゃありませんよ」
「まだありますか?」
「ええ。地域との関係もありますよね」

理事長は、少し意外そうな顔をして考え込んだ。
「地域……」
「そうです」

私はホワイトボードを指しながら続けた。
「大学は、大学の中だけに存在しているわけではありません」
学生。
保護者。
卒業生。
教職員。
地域。
企業。
高校。

いろいろな人とのつながりの中で、大学の価値はつくられている。
私はホワイトボードに円を書いた。
その中心に、
大学
と書いた。

そして周囲に、
学生
保護者
卒業生
教職員
地域
企業
と続けた。

そして、それぞれを線で結んだ。
「これがブランドです」

理事長は、その図を見ながら言った。
「大学そのものを変えるというより、大学と周りの人との関係を見直すということか…」
「そうです」

【そして一つの問題が・・・】
ところが、そのときだった。
理事長が突然、険しい顔になった。
「先生」
「はい」
「一つ大きな問題がありますわ 」

~続く~

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