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-13- 近大マグロ仕掛人のブランド再生塾/私立大学編

2026年10月15日 コラム


第5章 大学の未来をつくるブランディング 
―「選ばれる理由」が、大学の経営を変える―

【地域の人たちが見ていた大学】
数日後、私たちは大学の近くにある商店街を訪れた。
理事長が以前から付き合いのある商店街の会長にお願いし、地域の方々から大学について話を聞かせてもらえることになったのだ。

商店街の一角にある事務所には、会長のほか、飲食店を営む女性や、長年この地域で商売を続けている男性が集まってくれていた。
「今日はお忙しいところ、ありがとうございます」

理事長が挨拶すると、会長は笑顔で答えた。
「いやいや、こちらこそ。大学の理事長さんが、わざわざ私たちの話を聞きに来てくれるなんて、ありがたいことですわ」

理事長は笑顔でこう切り出した。
「実は、大学のこれからを考えるうえで、地域のみなさんが私たちの大学をどう見ておられるのか、率直にお聞きしたいと思いまして」

「なるほど。そしたら、遠慮なしで言わせてもらいますわ」
会長は、親しみを込めた口調で話し始めた。
「大学がこの町にあることは、みんな知っていますし、学生さんもよう見かけます。長いこと地域にある大学やさかいね。ただ、正直なところ、大学が地域にどんなことをしてくれているのかと聞かれると、ちょっとすぐには答えにくいですわ」

理事長の表情が、少し曇った。
「地域との交流については、これまでも取り組んできたつもりなんですがねえ……」

「ええ、それはようわかっています。大学祭のときには人も集まりますし、地域のイベントに協力してもらったこともいっぱいあります。ただ、大学の普段の活動となると、なかなか見えてこないんですわ」

私は、会長に尋ねた。
「もし大学に、こんなことをしてもらえたらうれしい、ということがあれば教えてもらえませんか?」

会長は、少し考えてから答えた。
「そうやねえ。例えば、学生さんが地域の商店や企業のことを調べてくれたり、若い人の目線で町の魅力を発信してくれたりしたら、うれしいんですけどね」

隣にいた飲食店の女性も、話に加わった。
「うちの店も、若いお客さんにもっと来てもらいたいと思ってるんです。でも、どうやって情報を発信したらいいのか、ようわからんところもありましてね。学生さんと一緒に考えられたら、うれしいんですけど…」

「なるほど。地域の方々は、大学に何かをしてもらいたいというだけでなく、一緒に何かをつくっていきたいと思っておられるんですね」
私がそう言うと、会長は大きくうなずいた。
「そういうことです。大学には、先生も学生さんもいて、いろんな知識や技術があるでしょう。それを大学の中だけで使うんやなく、町のためにも活かしてもらえたら、地域にとってはすごくありがたいですわ」

帰り道、理事長は考え込んでいた。
「先生、地域の方々は、大学をもっと身近な存在として感じたいと思ってくれてるんですね」

「そうですね。大学には教育や研究という大切な役割があります。でも、それが地域の人たちの暮らしや仕事とどうつながっているのかが見えなければ、大学の価値は十分に伝わりません」
「地域貢献という言葉は、これまで何度も使ってきましたが、伝わっていなかったということですかね」
「そうですね。大切なのは、その言葉を掲げることやなく、地域の人たちが実際に価値を感じられる関係を具体的につくっていくことなんですね」

理事長は、静かにうなずいた。
学生、保護者、高校の先生、そして地域の人たち。
それぞれの話から、大学に対する期待が少しずつ見えてきた。
ただし、私はまだ、これが大学の最終的な強みだと決めつけるつもりはなかった。

さらにもう一つ、確かめておきたい相手がいたからだ。

~続く~

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