MAIL

BLOG

ブログ

-18-最終回 近大マグロ仕掛人のブランド再生塾/私立大学編

2026年10月21日 コラム


【選ばれる大学への第一歩 】

さらに半年が過ぎた。
ある日、私は再び大学を訪れた。
理事長室に入ると、理事長は以前よりも落ち着いた表情で迎えてくれた。

「先生、今日は一つ、報告したいことがあるんですわ」
「何ですか?」

「先日、ある高校の先生がこんな話をしてくれましてね。『以前は、偏差値や資格取得の実績を中心に大学を紹介していましたが、今は御校で学生がどのように支えられ、成長しているのかも説明できるようになりました』と」

私は、思わず笑顔になった。
「それは、うれしい話ですね」

「ええ。学生募集の結果については、まだまだこれからだとは思うんですがね、ただ、大学の中で当たり前だと思っていたことが、外の人にとっては大切な価値だったんだと、改めて感じています」

「そうですね。大切なのは、大学が自分たちの強みを一方的に決めるのではなく、相手の声を聞きながら、その価値を育てていくことです」

理事長は、窓の外に目を向けた。
キャンパスでは、学生たちが友人と話しながら歩いていた。教員の研究室へ向かう学生もいれば、職員に何かを尋ねている学生もいる。
特別な光景ではない。
しかし、以前の理事長なら、何気なく見過ごしていたかもしれない日常の風景が、今は違って見えているようだった。

「先生、私はこれまで、学生募集が厳しくなるにつれ、何か新しいことを始めなければならないと考えていました。新しい学部をつくる、設備を整える、広報を強化する。もちろん、それらが必要な場合もあるでしょう。でも、その前に、自分たちがすでに持っている価値を見つめ直すことが必要だったんですね」

「ええ、そうなんです。新しいことを始めるのも大切ですが、今あるものの価値に気づかないままでは、何を始めても、大学らしさが見えにくくなってしまいますからね」
「大学らしさ、ですか……」
「ええ。この大学でなければ得られない学び、この大学だからこそ出会える人、この大学だからこそ成長できる環境。それを見つけて、磨いて、伝えていくんです」

理事長は、深くうなずいた。
「先生、今回のことで、もう一つわかったことがあります」
「何でしょう?」
「ブランディングというのは、大学を格好よく見せることではないんですね」

私は笑った。
「ええ、もちろんです。見せ方だけを変えても、実態が変わらなければ意味がありません。大切なのは、大学が自分たちの価値を理解し、それを日々の教育や学生支援の中で実践し続けることです」

「なるほど。そして、その価値を必要としている人たちに、きちんと伝えていくんですね」
「そうです。それが積み重なると、やがて『この大学だから学びたい』と言ってもらえるようになるんです」

理事長は、ゆっくりと笑顔を浮かべた。
「先生、これからも、いろいろと相談に乗ってください」
「もちろんですよ。こちらこそ、よろしくお願いします。ただ……一つだけ、お願いがあるんです」

「何ですか?」
私は少し茶目っ気を込めて言った。
「そろそろ、コンサル料金をもう少し上げていただけないかと……」
「えっ?」

理事長の表情が一瞬、止まった。
「あっ、冗談、冗談ですよ!」

私は慌てて言い直した。
人間関係を円滑にするには、適度なユーモアが必要だと、私は常々思っている。しかし、どうやら今回はタイミングもネタも間違えたらしい。いわゆる「すべった」のだった。私は心の中で苦笑し反省した。

まあ、講演などでもよく「滑る」ので、こんなことには慣れている。

私は改めて表情を引き締め、理事長に伝えた。
「理事長、これからも、ぜひ外の人の声を聞き続けてください。そして、大学の中で働く教職員や学生の声にも、しっかり耳を傾けてほしいんです」

「ええ、わかっています」
「ありがとうございます。ブランドって、一度つくったら終わりというものではありません。社会が変われば、学生も変わる。そうなれば、大学に求められる価値も変わってきますからね。だからこそ、何が本当の強みなのか、これからも問い続けなければならない永遠のテーマともいえるんですよね」

理事長は、ゆっくりとうなずいた。
「なるほど。私たち自身が、問い続けなければならないということですね」

「そうです。ブランディングは、見栄えをよくしたり、大学を宣伝したりすることだけではありません。大学の本当の価値を見つめ直し、これからどんな大学を目指すのかを考え続けることでもあるんです」

私はそう伝えながら、今後もこの大学が自らの強みに気づき、それを育てていけることを確信していた。

私は、理事長室を後にした。
キャンパスを歩きながら、近大マグロのブランドづくりに取り組んでいた頃を思い出していた。
あのときも、最初からブランドの答えがわかっていたわけではない。
養殖現場や販売の現場に足を運び、いろんな人の話を聞き、試行錯誤を繰り返す中で、少しずつ価値が見えてきた。

大学も同じだ。
大学の未来を変えるために、必ずしも最初から大きな答えを持っている必要はない。

必要なのは、現場に足を運ぶこと。
相手の声に耳を傾けること。
そして、自分たちが当たり前だと思っていることを、もう一度問い直すことだ。

私は、心の中でつぶやいた。
ブランドは、つくるものというより、見つけ、育て、伝え続けるものなのかもしれない。

そして、その積み重ねが、やがて大学の未来を変えていく。
「この大学だから学びたい」
そう言ってもらえる大学になるために・・・。

大学の真の挑戦は、まだ始まったばかりだった。

~終わり~


※講演・コンサルティングのご相談は以下からお気軽にどうぞ。
************************
〒589-0023 大阪狭山市大野台
株式会社Oak-Jソリューションズ
代表取締役 大久保良雄
Mobile:090-6986-1503
Mail : info@oak-j.co.jp
Hp  : https://oak-j.com/
************************

#オークジェイ
#近大マグロ仕掛人
#大学コンサルティング
#大学ブランディング
#大学経営
#大学改革
#学生募集
#大学広報
#少子化対策
#大学再生