-2- 近大マグロ仕掛人のブランド再生塾/医療機関編

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-2- 近大マグロ仕掛人のブランド再生塾/医療機関編
「それで十分です。実は、私たちも何から手をつければいいのかわからなくなっているんです」
「具体的には、どんなことで悩んでおられるんですか」
理事長は、机の上に置かれた資料を手に取った。
「まず、経営です。収支は年々厳しくなっています。診療報酬には制度上の制約がありますし、物価や人件費は上がっています。職員の負担を考えれば、簡単に人員を減らすわけにもいきません」
「そうですよね」
「それに、医師や看護師の採用も難しくなっています。採用活動に力を入れても、思うように応募が来ない。
患者さんに来ていただくことも、職員に働きたいと思ってもらうことも、以前より難しくなったと感じています」
「なるほど」
「そこで、広報活動を見直しました。ホームページを刷新し、診療科の紹介を充実させ、地域向けの健康講座も開催しています。医療機器の導入にも取り組んできました。しかし、期待したほどの変化が見えないんです」
私は資料を見ながら尋ねた。
「理事長は、この病院の強みは何だとお考えですか」
「それは、医療の質です。優秀な医師がいますし、看護師も一生懸命に働いてくれています。設備も整えています。地域の患者さんに、安心して医療を受けていただける体制をつくってきたつもりです」
「それは大切なことですね」
「ところが、患者さんが病院を選ぶとき、そうした努力が十分に伝わっていないように思うんです」
理事長の言葉には、悔しさがにじんでいた。
私は、その思いを否定するつもりはなかった。
医療の質を高めるために、病院が日々努力していることは間違いないだろう。患者の命を預かる現場では、ひとつひとつの判断に大きな責任が伴う。
しかし、私はここで、少し違う角度から考えてみたかった。
「理事長、ひとつ質問してもいいですか」
「ええ、もちろんです」
「患者さんは、医療の質が高い病院を選ぶのでしょうか。それとも、医療の質が高いと自分が感じられる病院を選ぶのでしょうか」
理事長は、少し考え込んだ。
「それは……両方ではないですか」
「私もそう思います。ただ、患者さんが、すべての病院の医療技術や設備を正確に比較することは難しいですよね」
「まあ、確かにそうですね」
「だからこそ、患者さんは、医療の質だけでなく、説明がわかりやすいか、困ったときに相談できるか、自分や家族のことを理解してくれるか、そんなことも含めて病院を評価しているのではないでしょうか」
理事長は、黙って聞いていた。
私は続けた。
「もちろん、それだけで医療の質を判断できるわけではありません。安全性や治療成績など、専門的に評価すべきことは別にあります。でも、患者さんが実際に感じている価値を知らずに、病院の魅力を伝えようとしても、どこかにずれが生じるのではないでしょうか」
理事長は、ゆっくりと資料を机に戻した。
「なるほど。私たちは、自分たちが伝えたいことを中心に広報を考えてきたのかもしれません」
「そこが、最初の出発点になるかもしれんのですね」
3.医療の質と、ブランドの関係
「先生、ひとつ確認させてください」
理事長が身を乗り出した。
「ブランドというと、企業のロゴや広告、知名度を高めることを想像するのですが、病院にもブランドが必要なのでしょうか」
「もちろんです。ただし、私が考えるブランドは、ロゴや広告のことだけではありません」
~続く~
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